家族について
僕は家族が好きじゃなかった。
「家族は大切に」とか「血が繋がった唯一の存在」とか、昔はそんな言葉が大嫌いだった。
1997年の冬、僕は7人家族の長男に生まれた。
長男といってもやっと生まれた男の子というだけで、上に2人、年の離れた姉がいた。おじいちゃん、おばあちゃん、父、母ともに7人で暮らしていた。思い返せば楽しい思い出もあったが、それほど多くない。むしろいやな思い出の方が多いかもしれない。姉ともそれほど仲良くなかったし、喧嘩もよくした。父はパチンコ中毒だったし、暴言は日常茶飯事。そんな父に母も愛想をつかせて僕が小学校5年生の時に離婚した。自分で言うのはあれだが思春期は家族のことでとても苦労をしていた。
でも、そんな中で一つ上の姉だけは家族をつなぎとめてくれた。姉弟の真ん中というのもあったんだろう、いつも怒られる僕を支えてくれたし、家族のバランスを上手くとってくれていた。今思えば、あれがどれだけ負担になっていたのか計り知れない。自分を押し殺して、家族がうまくいくように常に考えて、気を配って、精神をすり減らしたことだろう。それでも僕のことを気にかけてくれ、いつも優しく接してくれた。僕はそんな姉が大好きだった。
先日、その姉の結婚式があった。
大学を卒業してから、姉とは年に一度くらいしか連絡を取らなかった。久しぶりにあった姉はウエディングドレスを着ていた。すごく綺麗だった。いつもかまってもらい、苦労をかけた姉が幸せな顔をしていた。涙が止まらなかった。
相手の人と話をしたこともあるが、誠実だし、運動もできるし、子どもが大好きな人だ。姉ともすごく気が合いそうな人だ。この人なら幸せにしてくれるだろう。幸せにしてほしい。幸せにしてもらわないと困る。
結婚は人生の墓場だと世間ではよく言われる。「結婚してみたら思っていたのとは違った。」「幸せなだけが結婚じゃない。」「死ぬまでずっと一緒に"いなければならない"。」
果たして、本当にそうなのか。
少なくとも、僕がみた姉は、結婚式で今までで一番幸せそうな顔をしていた。続くかなんて分からない。離婚もするかもしれない。でも、周りに気を配って笑顔を作っていた姉が、自分のことで幸せな顔をしているのを初めてみた。それだけで結婚が人生の墓場でもいいじゃないかと思えた。
過保護だった祖母も
すぐに文句を言う祖父も
大嫌いな父も
いなくなってしまった母も
自己中な姉も
自分勝手な僕も
そして大好きな姉も
みんな揃って家族なんだと実感した。どこにいても繋がっていたんだ。
僕は家族が好きじゃない。
それでも僕たちは家族だ。
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